「総合エネルギーサービスシステムとCO2削減ポテンシャル」

 大阪大学大学院工学研究科 教授 辻 毅一郎 先生


近年、地球規模での資源・環境容量の制約を強く意識した行動がこれまで以上に求められている。我が国のエネルギー需要は、不況の影響もあり産業部門は停滞しているものの、家庭部門・業務商業部門においては依然として増加しているというのが一般認識である。また、CO2を削減するためには削減効率を求めるだけではなく、費用・エネルギー消費とのバランスを考える必要がある。これらのことから、都市における総合エネルギーサービスシステムをモデル化し、最適化を行った。

 2km×2kmの実在する都市をモデル化し、まず、業務部門のエネルギーシステムと、住宅部門のエネルギーシステムとに分けた。業務部門では現状のシステム、ヒートポンプ、地域冷暖房システム、コジェネレーションシステムなどを、住宅部門では現状のシステム、地域冷暖房システム、太陽電池、燃料電池などを用い、その使用分布を最適化した。その結果、近畿地方にある4都市で16〜33%のCO2削減効果を得ることができた。さらに、個々の都市でのローカルなエネルギーシステム最適化が地域全体へ及ぼす影響についても考慮した。これに関してもモデル化を行い、大都市から順に最適を行うというシナリオに基づいて計算を行った。結果、総合エネルギーサービスシステムの計画時にCO2排出削減と一次エネルギー消費抑制を同時に行うことにより、地域全体で最大13%の削減効果が見込まれた。また、このときの分散型電源の全電源に占める割合は約20%であった。

次に、コンピュータによる支援システムを構築した。これには、地図および景観表示機能、都市施設・エネルギーシステム代替案エネルギー需要の設定機能、都市エネルギー最適化支援機能、シナリオ管理・データ比較機能などを備えた。これにより、学術的方法論に基づく計画法の適用−ソフトウェア化し、汎用性・実用性・利便性・頑健性の向上を図った。
 
 また、エンドユースデマンドの計測と分析として、住宅66軒におけるエネルギー需要計測を実施した。機器別の消費電力を計測し、住人に機器毎の消費電力、トータルの消費電力を提示するという実験を、対象世帯を変え約3年半にわたって行った。結果として用途別エネルギー需要推定アルゴリズムを確立し、用途別月別日負荷曲線を得ることができた。エネルギー計画の他、暖房用エネルギー分析などに活用が可能である。
 
 研究の将来展望としては、品質別電力供給も視野に入れた地域特定型総合エネルギーサービスシステムの計画に関する方法論の充実化を図り、地域に根ざした「地域エネルギー環境システム学」なる新しい学問分野の基礎が築けることを期待できる。また、ソフトウェアに関してその機能の充実化、汎用性・操作性・頑健性の向上を図ることにより、その方法論が実践できることをテーマとして挙げることができる。さらに、エネルギー消費に関する計測調査もさらに展開し、実状に基づく合理的な政策策定に資するデータベースの構築を行いたいと考えている。


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