「グループ・ダイナミックスから見たコミュニケーション、規範、モラル」

京都大学大学院人間・環境科学科 杉万 俊夫 教授


  1. 人間像の常識を問い直す―常識としての人間像は、1.「生物的固体」、2.「わが身」、3.「個人」の三つのレベルからなる.しかし、グループ・ダイナミックスは、「わが身」や「個人」を前提としない理論構成の中で、「わが身」や「個人」の形成を説明する。
  1. グループ・ダイナミックス―集合体の動態(=集合流)を研究する人間科学である。この場合、固有の世界が現前する物質の区別は、生物と非生物の区別と同じではない。例えば小さいな女の子がいて、その子が妹のようにかわいがっているぬいぐるみの耳を誰かが掴もうなら、その子は自分の耳を掴まれたように泣き出すとしよう。重要なこととして、人間科学においては、対象と研究者を一線で分離することは不可能である。
  1. コミュニケーションと規範―コミュニケーションには2種類ある。1つは身体の「交換」である。これは、ある身体が他の身体の場所において世界を感受することである。もう1つは、第3の身体(超越的身体)の擬制である。濃密な身体の交換により、複数の身体の個別性を超えた共通の経験を生じる。この共通の経験は、交換しあう個別の身体には帰属できない。共通の経験は、個別の身体のいずれでもない。しかし、個別の身体を代表する「第三の身体」に帰属される。身体たちが交換しつつも、第三の身体を擬制し、第三の身体の声を聞くようになった時、規範が成立すろ。規範には2種類ある。すなわち「べし規範」と「である規範」である。「第三の身体」は蓋然的に成長(作用圏の拡大、規範の一般化、現前しない身体への変化)し得る。それには交換する身体の増加や、作用圏の外部にある身体への一方的伝達が必要である。作用圏外の人へと規範が広まる時、その規範はより頑強となる。
  1. ある過疎地域の活性化運動―コミュニケーションと人間科学の例―鳥取県智頭町における「村おこし」の例。はじめはたった二人からの出発であったが、従来の規範「保守性・閉鎖性・有力者支配」から新しい規範「住民による自治」が創出・拡大された。
  1. モラル―規範とは、妥当な行為(想定し得る行為)を非妥当な行為から区別する操作である。モラルとは、規範形成の一つの結果である。モラルの欠如とは、ある狭い作用圏であは妥当であるが、より広い作用圏では妥当ではない規範に起因する。


質疑応答

    Q1) 智頭町町おこしが成功した理由。
        A) 外を利用した戦略と小さいな規範の芽を支援する仕組。

    Q2) 現代社会の多くの人が目標喪失に陥っているが、グループダイナミックスの立場からはどう見るか?
        A) 個人の目標「意識」の問題ではなく、従来の「第三の身体」、すなわち、規範が機能不全に陥っている。


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