「インターネットマーケティングの理論と課題」

京都大学大学院経済学研究科 教授 若林 靖永 先生


 インターネットを始めとするIT産業は急速な発展を遂げているが、この「IT革命」には、二つの本質がある。まず一つは「合理化」である。これは、データの蓄積・分析の高速化により自動的かつカスタマイズされた処理が可能になり、システムの時代へと移行するということを意味する。もう一つのキーワードは「オープン」である。これはメディアの革新により、すべての人、組織の意識と行動に変化がもたらされるとともに、既存の枠組みが崩れ、新たなコミュニティが形成されるということである。
 
 さて、インターネットマーケティングに対するアプローチには、複数のフレームワークが存在し、伝統的なマーケティングのフレームワークである4Pで構成されるフレームワーク、インターネット独自のフレームワーク、既存のマーケティングとインターネットマーケティングとの融合・統合を進めるフレームワーク、インターネットのみならずITを活用したビジネスへの転換をすすめるフレームワークと、大きく四つに分類することができる。このうち、二つ目のフレームワークである、インターネット独自のフレームワークはさらに複数のフレームワークに分類される。

 ITビジネスとは、インターネットのみにとらわれず、さらに視野を拡大して考えるものであり、そこには新しい可能性として、トラフィック、ユーザーエクスぺリエンス、オンラインコミュニティという三つのトピックがある。

 まずトラフィックであるが、Webサイトへの集客のツールは、ドメイン名やリンクからインターネット広告まで多岐にわたるものである。

 次にユーザーエクスぺリエンスであるが、ITビジネスにおいては、顧客主導経済への移行が進み、ユーザーの不満解消を軸とした競争が行われるため、「経験」をデザインする(「経験」を元に顧客を獲得する)ことがポイントになっている。つまり、顧客に応じたカスタマイゼーションが進むということである。

 オンラインコミュニティとは、顧客に力を与えるタイブのビジネスモデルである。Webサイトにおいて、顧客にあった情報を提供し、利用者とのコミュニケーションを促進することによってコミュニティが拡大する。

 これからのITビジネスに求められる課題はナビゲーションビジネスである。すなわち、リーチ(どれだけの顧客と接触できるか、その顧客へどれだけの製品を提供できるか)、アフィリエーション(企業は誰の利益を代弁するのか)、リッチネス(顧客に提供する情報、顧客に関する情報の詳細度)を考慮してビジネスを展開してゆくことが重要になってくる。


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