「電力自由化の現状−営業部門から−」

関西電力(株) お客さま本部 エネルギー営業グループ チーフマネジャ- 小谷 弘明 氏


T.電気事業の概要  
 通信から始まった電気の利用はやがて照明・動力へと広がり、それにともなって電気事業者数も急増した。その後合併・再編成を繰り返して昭和26年に民営による地域独占の電力会社10社が設立され、現在に至った。この地域独占体制は50年近く長く続いたものの、総括原価制度による電気料金設定のため、欧米諸国に比して電力料金が高くなってエネルギー資源を海外依存する我が国では、国内製造部門が国際競争力を維持できないとの批判を受け、また1990年代以降の電力自由化への世界的趨勢下に、最近は我が国でも次第に電力自由化へと移行してきた。

 関西電力は設立以来、増え続ける電力需要に応じて供給力をあげる努力を続け、常に需要以上の供給力を確保してきた。電力の安定供給という点で、当社は海外に比べて非常に優れている。また、原子力発電による発電比率が50%超えていることから、地球温暖化防止という環境面においても他の国内電力会社の中でもトップレベルである。

 電気料金に関しては、昭和63年の電気料金改定以降、経営効率化努力などにより一貫して料金は低下してきた。海外との料金比較においても、購買力平価による比較では他国にも引けをとらず、十分安くなっている。しかし、為替レートによる比較では決して安いとは言えない。とはいえ、地域独占という形ではなかなかこれ以上の値下げは実現できないことも、我が国の電力業界の電力自由化への移行の背景であった。

U.変革期にある電気事業
 我が国の電力自由化の始まりは、橋本内閣時代に、経済改革プログラムの一つとして電力市場の緩和があげられたことによる。 その後、供給信頼度、エネルギーセキュリティを保ちつつ、環境にも配慮なければならない、という条件をクリアしながら料金を下げるべく、日本の電力自由化は進められてきた。電力事業の発電・送電・販売のうち、まず発電分野の卸売り部門が自由化され、その後、小売部門の自由化も始まった。

 新規の特定規模電気事業者(PPS)及び各電力会社は、送電線の利用料を所有する各電力会社に支払って送電する。しかし、この送電線利用料には各電力会社の地域をまたがるたびに振替料金が加算されるために、PPS、各電力会社とも遠方の顧客に電力を供給することは、コスト競争力の面で厳しく、自由化の妨げとなっている。この振替供給制度をなくすことによって競争を激化させよう、また送電線の利用が公平に行われるように監視する組織をつくろうというのが最近の動きである。また、卸市場をつくってPPSの供給力を確保しやすいようにしようというものもある。これらによって、非常に広域な競争ができる状態、発電能力そのものも集めやすい状態を作り、競争を激化させよう、というのが今の電力市場自由化の方向である。

 しかし、今後の経済状況の停滞で電力需要の鈍化の状況下では現在ですら過剰な設備をもつ電力事業者同士が、限られた市場を奪い合うようになるため、苛烈な価格競争が起こるものと予想されている。

V.当社の現状と今後の取り組み
 今後の電力自由化の一層の範囲拡大を勘案すると、これからの電力事業の展開では、電気の供給以外に、電気供給をコアに総合事業への展開が必至である。しかし、関西電力にはノウハウ、技術力、広範な通信ネットワーク、地域との信頼関係という、新規事業展開上の強みがある。発展機会として、関西地域のさらなる発展可能性、また今後発展するアジア地域との連携も考えられる。また、電気の高い品質に対するニーズは強いものがある。今後ますます強まるであろう生活アメニティの向上などのニーズをうまくとらえ、様々な事業、商品を総合的に提案するような企業として展開することを目指している。  


ホームシンビオについて活動報告トピック
リンク事務局サイトマップ