「電気自動車・燃料電池自動車の最近の動向」

(財) 日本自動車研究所 FC ・EV センター 企画グループ 研究員 荻野 法一 氏


 環境・資源エネルギー問題が社会問題となっている現在、石油依存度が高く、また二酸化炭素排出量が輸送機関の中で半分以上を占めている自家用乗用車の低燃費、クリーン化が求められてきており、世界中の自動車企業はその開発にしのぎを削っている。今回は「電気自動車の普及」並びに「燃料電池自動車の開発動向」を中心に最新の情報を紹介する。

 電気自動車の歴史は古く、初めて開発に着手されたのは今から100年以上も昔のことである。開発当初の電気自動車(EV)は、性能面で大幅にガソリン車に劣っていたが、1996年になってニッケル水素電池やリチウムイオン電池を搭載した第二世代電気自動車が登場し従来車の性能と比較しても遜色が無くなった。しかし、価格は依然高く、インフラ設備の不十分さも指摘され、普及には至らなかった。そこで電気自動車の課題を克服するために、電気自動車の技術を応用した複数の動力源を組み合わせて走行するハイブリッド電気自動車(HEV)が開発され、価格の安さも手伝い、トヨタが発表したプリウスを筆頭に電気自動車市場が拡大し始めてきた。現在、国内に5000台以上の電気自動車と10万台近くのハイブリッド電気自動車が普及しているが、2010年には電気自動車は約11万台、ハイブリッド電気自動車は200万台以上の普及を目標としている。

 燃料電池車(FCV)は動力として燃料電池を用いたゼロ・エミッションを実現させる車で、電気自動車のような長時間の充電を必要とせず、走行距離も長く、内燃機関自動車代替として期待されている。現在は開発段階で実用化には至っていないが、燃料電池のパワー密度は年々大幅に向上しており、世界的に見ても我が国の燃料電池技術は高い水準にあることを示している。また2001年初頭より、大臣認定を取得した燃料電池車の実証実験が開始され、燃料電池車の時代に徐々に進み始めている。そこで最も問題となるのがインフラとなる水素供給設備の整備であるが、現在、経済産業省が推進する国家プロジェクトとして「水素・燃料電池実証(JHFC)プロジェクト」が立ち上がっている。これは2002年から2005年の4年間にわたって自動車メーカー8社の燃料電池車を各種燃料による水素供給設備を並行して公道走行試験を行う世界初の取り組みであり、燃料電池車の走行性をはじめ、信頼性、環境特性、燃費など、市街地走行データと水素ステーション使用データなどを取得し、評価していく。燃料電池車の実証試験はCaFCP(アメリカ)、CUTE&ECTOS(欧州)に代表されるプロジェクトが海外においても積極的に行われており開発競争が激化している。低コスト化、軽量・コンパクト化、燃料インフラ及び関連規制の整備など燃料電池車の抱える課題はまだ多いが2010年を目処にインフラの整備を行い、公用車を中心に社会への導入を進めていき、2020年には自家用乗用車への本格的普及を果たせるように今後の更なる開発・研究が期待される。


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