「地球温暖化と環境税」

株式会社 旭リサーチセンター社長 (中央環境審議会委員) 永里 善彦 氏


97年12月、京都で地球温暖化防止国際会議が開かれ、温室効果ガスを2008年〜2012年の間に1990年と比較して、日本とカナダが6%、EU は8%、アメリカ7%、ロシアとニュージーランドが0%減らすことを決めた。同時に、他国から削減分を買い取る排出権取引や他国で温暖化対策に投資したら、その削減分を国内の削減目標に利用できるCDMなど、いわゆる「京都メカニズム」と呼ばれる「京都議定書」が議決された。

しかし、その後アメリカは京都議定書を離脱したが、それまで態度を保留していたロシアがWTO加入と引き換えに昨秋批准し、今年2月16日、議定書は漸く発効した。

経済活動に伴うエネルギーの消費量が増加するとCO2が増加するが、EUは人口が増えず、経済成長の可能性が低くCO2排出量を抑えることが可能である。

最大の排出国アメリカと今後大幅な排出が予想される中国等の途上国が参加しないため、京都議定書を日本が遵守しても、地球規模で考えた場合、温暖化ガス排出量増加防止という本来の目的にほど遠いものになりつつある。

欧州主要国は、従来から所得税、法人税等の直接税を多く徴収すると、国の活力が失われるとして、間接税の比率を上げるように見直してきた。しかし、消費税を多大にとることも戒めており、概ね15〜18%に留めている。そこで、1980年代後半から環境税が導入され始めた。この税は、一般財源の税収を確保すること、温暖化対策の効果を上げることを意図しているが、各国とも産業の競争力維持のため、各種の減免税措置を施している。税導入は、専ら一般財源の税収確保に寄与している。

地球全体を考慮して、温室効果ガスを減らすのが本質的な対策である。そのためには先進国が途上国を支援することが最も好ましい。京都議定書には問題がある。グローバルなCO2の排出削減を本来目標としなくてはならない。そのためにはエネルギー多消費国のすべてが入れるような合意が重要であり、まず米国が入れるような枠組み、さらには発展途上国が入れるような枠組みを新たに考えなければならない。

環境省はCO2排出量6%削減のため、エネルギー消費を抑える環境税の導入を検討している。しかし、エネルギー多消費産業への新たな課税は、当該企業の内部留保の取り崩しという形で研究開発力を奪い、次世代への新規事業の芽を摘むことになる。課税することについて真の合意がないまま、企業と国民に負担を負わせれば、活気のある海外諸国が存在する昨今、企業には国内での生産意欲を失わせるとともに、課税されていない国からの製品が流入し、国内産業の衰退につながる。新たな環境税の導入は、長期的には国の活力を殺ぐことになる。

 地球温暖化問題の解決策は、先進国による途上国への支援が不可欠で、より長期的には技術革新なくして片付かない課題である。水素エネルギー社会、核融合エネルギーの利用社会が実現するまでは、日本は、当分の間、原子力エネルギーの平和利用に頼らざるを得ず、また、原子力の平和利用技術をもって世界に貢献すべきである。


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