「工学倫理、学習と実績


京都大学名誉教授 西原 英晃 先生


はじめに

 ある人から、「○○だったら、JOC事故は防ぐことができたのではないか。」という文章の空白部分に何を入れたら良いと思うか、と問われたことがある。私はそのとき「当事者意識があれば」と答えた。

1.科学技術者と社会 

・ 科学技術者は多様、しかし社会と『契約』を自覚する必要が増えている。
・ 工学は『複雑系』の中での『社会的実験』という認識が必要。
・ 学会・協会は社会との接点を強化する。
・ 所属組織の整備が肝要である。

2.工学系学協会における倫理網領 

 ステファン・アンガ―氏によると倫理規定の機能は、(1)その専門職の責任についての構成員の集合的認識形成に寄与する、(2)倫理的に行動することが規範であるという環境の育成を助ける、(3)具体的な状況における手引きまたは注意書きとして機能する、(4)規定を成文化し修正する過程が専門職業にとり価値がある、(5)教育の教材として役立つ、(6)その専門職にある集団がその行動について真剣に考えていることを外部に示すことである。
倫理規定は当事者自らの宣言であり、当事者の自律性が必要であり、規定を守れば全て良しではない。また、多様な価値観を認め、全体の統合を図ることも必要である。そして技術者個人の倫理から組織の倫理(風土)へと波及させる必要がある。

3.倫理問題の解決法

・ 解決法は一つではないが、『定石』はある。
・ スキルベースは最小限身につける努力が必要。
・ インテリジェンスを身につけた技術者が求められる。
・ ケース・スタディーを賢明に行う。
・ 企業(組織)は倫理システムをもたねばならない。

4.原子力技術に見られる倫理問題

原子力「業」は、本来禁止された「業」である。複雑系としての性質を備えていて、全体がなかなか見えない技術であり、また軍事問題との絡みを無視することのできない技術である。社会にはなかなか冷静で合理的には理解されがたい独特の特質を備えている。
原子力学会などを中心に進められている努力として、例えば、制定した倫理規定のフォローアップ、見直し案の作成、倫理問題の事例集や教材類の作成 、講演会の実施と受講証明の発行、原子力関連の倫理に関連する事項の現状調査などがある。
・ 組織の倫理が大きなファクターである。
・ 原子力ではその体系の中に倫理原則を組み入れる必要が特に大きい技術である。
・ 全ての『関係者』が社会的責務を負っている。
・ したがって技術者の『説明責任』が重要である。


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