総合質疑


宮崎慶次先生(阪大名誉教授)を司会者に、会場と2名の講師との間で大略下記の質疑討論があった。

1.リスクのバランス

Q:『絶対の安全はない、リスクを下げる努力が常に必要』とのお話だが、ある特定の分野で安全が保証される程度までリスクを下げたら、さらにリスクを下げる努力はいらないのではないか?

A.どのような分野でもある部分のリスクを下げようとすればコストも上がっていく。その場合、他の面にコストをかけた方が社会的にはよい場合もあり、どのポイントにコストをかけるかは、企業、行政、社会のバランスで決まる。安全が保証されているのにさらにコストをかけてリスクを下げるのは不合理である。どの程度までリスクを下げるかは、それぞれの立場で判断することである。ある程度の安全が保証されれば、それ以上は行政は要求しない方が良いという考え方もある。


2.安全指針の体系化
 
Q:新しい知見が得られた場合、安全委員会ではどのように、安全指針に取り込んでいくのか?

A:新しい知見を指針の体系にどのように組み入れるかの問題であるが、今は解説の部分にとりいれるようにしている。その場合、位置づけがむつかしい場合がある。
 理想としては、指針にいくつかのヒエラルキーをつくっておくのがよいのではないか。例えば、基本的な指針、中程度の指針、細部の指針を予め作っておく。そして、新しい知見が出た場合、段階に応じて、組み込んでいき、見やすくまとめるのがよいのではないだろうか。
 

3.低放射線量

Q:低放射線量の問題だが、放射線利用と放射線防護での考え方で原子力学会はもっと音頭を取って欲しい。

A:原子力学会の中にも保健物理の専門家が多数いらっしゃって放射線生物学などのそれぞれ活躍されている。お互いの交流には努力しているつもりであるが、放射線分野(利用、プロテクション、など)はそれぞれ独立しているので、なかなか統合することがしにくい面もある。


4.安全文化と教育

Q:「安全」が崩壊しないためには、安全文化が表層的なものとなっていないかを見直し、安全文化の崩壊をしないようにするとのことであるが、社会基盤としての安全を育てるために「教育」を具体的にどうするかお考えを聞きたい。

A:社会で仕事につく従業員はとくに安全意識をしっかりもたねばならない。それには子供の頃に危険な目にあう、恐怖、痛みを実感する経験を得るのが大事と思う。それは学校任せではできないことで、家庭での教育に期待したい。


その他、もんじゅの高裁判決への対応や、ドイツのSNR300の廃炉や英仏両国の高速炉の稼働率の低い実績などの歴史的事情について説明があった。



ホームシンビオについて活動報告トピック
リンク事務局サイトマップ