「VR及びAR技術を用いた解体計画支援システムの開発と課題」

核燃料サイクル開発機構 敦賀本部 新型転換炉ふげん発電所
環境技術開発室   井口 幸弘

講演概要:  
新型転換炉ふげんは、26年間の運転を経て、2003年3月29日に運転終了、今後廃炉が予定されている。廃炉には10年間の準備期間があり、この間に使用済み燃料の搬出と廃止措置技術開発を行い、その後は解体撤去、廃棄物の処理処分の廃止措置を実施する。ふげんの廃止措置技術開発には、解体計画の評価技術、重水・トリチウム関連技術、原子炉本体解体技術などの項目があり、特に廃止措置を早く安く確実に実施することが重要である。このために現在、廃止措置エンジニアリング支援システム(DEXUS)を開発している。DEXUSは大別して(1)解体計画時の支援システムと(2)解体実施時の支援システムがあるが、講演では(1)に関連して「放射線環境下の解体作業シミュレーションシステム」開発と(2)に関連して「現場可視化システム」開発が紹介された。

●放射線環境下の解体作業シミュレーションシステム(VRdose) 作業量低減、被ばく低減、安全性向上のため、解体計画の事前検討を合理的・効率的に行う計算機を用いた支援システムとして、Vrdoseの開発を進めている。VRdoseは、仮想のプラントモデル内の線量率を可視化するとともに、作業シナリオを作成してその作業シナリオに沿った作業による被ばくの評価や作業の最適化を支援する。VRdoseには、(a)放射線量の可視化機能、(b)作業シナリオ構築機能、(c)被ばく線量の計算機能があり、3DCGによるインタフェースを通してこれらの機能を実行する。このVRdoseを評価するため、ヘリウム配管取り替え工事へ適用し、シミュレーションと実作業を事後に比較してその有効性を確認した。VRdoseを解体計画支援へ導入するには、計算高速化のための改良、プラントモデルの整備、シナリオ作成作業の合理化、実機解体試験への適用・評価、操作性・レスポンスの改良、他プラントへの適用・評価などが課題である。

●現場可視化システム 解体作業を安全確実に実施するため事前の教育・訓練が必要不可欠である。現場可視化システムは、事前の教育・訓練と同等の内容を現場で指示することで現場作業の安全性の向上を図るものである。現場可視化システムは、AR技術により実際のプラント構成機器に重畳して、その機器の3次元形状、設備の詳細情報、当日解体する機器や内包物、作業環境の放射線量などを表示するものである。そのプロトタイプシステムでは、ユーザの視点位置・視線方向のトラッキングのために、作業環境に160mm四方のマーカーを貼付してビデオカメラで撮影するマーカー方式を採用している。このプロトタイプシステムを用いて機能確認試験を実施し、本システムの有効性を確認した。しかし、マーカー周囲の環境条件によりトラッキングが不安定なこと、多数のマーカーが必要なこと、解体に伴いマーカーの貼り直しが必要なこと、などの問題点が残っている。本システムを実際の解体作業へ導入するためには、位置・方向検出のためのトラッキング技術の改良、レスポンス等の性能向上、ユーザインタフェースの開発、各職種への情報表示方法の整備が必要である。

質疑応答:
Q1: 解体作業は利益を生まないと言っていたが、ここでの開発技術を運転中のプラントの保守・運転に適用することでコストを下げ利益を生む技術になるので、是非、研究を進めてほしい。設計・運転・保守だけでなく解体も含めて有機的に結合したライフサイクルマネージメントが必要であり、この研究は今まで注目されていなかった領域に光を当てるものであろう。解体作業で既にわかっているような領域があれば教えて欲しい。

A1: 幸か不幸か、ふげんは非常に丈夫に作られており、これが26年間もの運転経歴につながっているが、逆に解体は難しい。建設と解体の違うところは、解体時には放射能が高いことと放射性廃棄物が多く出ることである。設計時には解体のことも考えて、解体が容易で放射化の少なくなるように設計することが重要である。

Q2: このシステムは作業員のためのものであるが、一般市民へのPA活動にも有効だと思う。

A2: このシステムは作業員のためのものであるが、解体作業やクリアランスなどの情報をVR技術によりわかりやすく提示できるため、一般市民へのPAの利用も考えたい。


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