「最近の事例に見る保安活動におけるヒューマンファクターの課題と 取組み」

(独)原子力安全基盤機構 規格基準部
システム評価グループ   牧野 真臣

講演概要:  
独立行政法人原子力安全基盤機構(JNES)では、国内外のトラブル事例等の人的要因について分析評価し、規制等へフィードバックするとともにデータを蓄積している。国に報告された事象あるいは原子力発電情報公開ライブラリーNUCIAに掲載されている事象において、人的要因が原因と判断できる最近の事象の傾向として、反応度監視操作/燃料・制御棒取扱作業時等の原子力特有の監視操作あるいは作業のヒューマンエラーが続けて発生している。これらの事象は、国際機関のOECD/NEAが安全実績低下の兆しとして提示している項目にあてはまり、原子力発電所において安全文化が脆弱になっていることを暗示する事象である。また、日本においても成熟期に達したはずの原子力事業で、組織に起因する問題が相次いで起こっており放置できない状態にある。こうした社会的な背景において、安全規制の課題がいくつかの委員会報告書でまとめられている。

JNESでは、こうした課題に対して、原子力安全文化の組織内醸成と定着化の基盤整備のために、安全文化の総合的な評価システムの開発を進めている。様々な研究者の定義をまとめると安全文化は、「I. 安全確保のための仕組み」、「II. 安全態度・安全行動」、「III. 安全態度・安全行動の共有性」の要素から成る概念と捉えてJNESでは、II、IIIの要素については、事業者による自主検査活動の対象と位置づけ安全文化評価支援ツール(SCEST: Safety Culture Evaluation Support Tool)を開発している。そして、Iについては、規制当局による保安活動の対象と位置づけ、SCESTで見いだされたリスク事象をその発生プロセスと継続プロセスの2段階に区別して捉える分析手法として、組織信頼性モデル(Organizational Reliability Model: ORモデル)を開発している。そして、この成果に基づき組織の安全文化を評価するための安全文化評価項目と、その結果を可視化する安全文化評価マトリックスの開発を進めている。  

更にJNESでは、原子力発電所中央制御室の技術基準について国内外の現状を調査して世界の潮流を把握し、ヒューマンファクターの観点から中央制御室の備えるべき技術要件についての評価の考え方を体系的に整理し、人間工学的設計に関する評価基準案を策定している。  今後は、これらの成果について妥当性の確認作業を継続し、実運用への適合性を確認するとともに、実運用するための制度設計の検討を進めていく。また、最近の事例分析の結果から、原子力発電所のシステム運用管理面での課題が見られ、今後の検討課題の一つとして取り組んでいく。


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