質問内容: 燃料電池は普及するのですか? するとしたらいつ頃になりますか? 



 回答 燃料電池車や燃料電池発電が普及する可能性は十分あるといえます。 

 燃料電池は予定では大体、2005年頃から実用化され、2020年頃に世界中に普及するようにいわれています。
 
 まず燃料電池とは、燃料がもつ化学エネルギ−を直接、電気エネルギ−に変換する装置のことをいいます。
その中で現在注目されているのが水素を用いる方法です。簡単にいうと、水の電気分解の逆の化学反応で、水素と酸素を化合させて、暖かい水と電気を取り出す、つまり熱と電気の両方を取り出す装置です。
 元来は、宇宙船の電源として使われていた、採算を度外視した非常に高価なアルカリ型の燃料電池でした。しかし、その後りん酸型の燃料電池が中型の発電装置として研究開発され、ほぼ実用化されていますが、まだまだ高価なうえ、連続運転の性能にも劣り、普及には至っていません。しかし、最近の技術進歩で固体高分子型の燃料電池(PEMといわれています)が開発され、小型化・可搬化できる見通しがでてきて、世界中の大きな自動車メーカが利用しようと燃料電池自動車の開発に取り組んでいます。

 燃料電池自動車の燃料は、ガソリンや灯油を用いる現在の自動車と異なって、水素を用いることになります。水素を用いる長所として、

  1. 水素は燃焼しても排出されるのは水なので炭酸ガスやNOX、SOXなどの大気汚染ガスがでないので、クリ−ンエネルギ−のゼロエミッション自動車になる
  2. 燃焼温度が高い
  3. 水を分解することにより水素を製造できるため水素自体は持続再生可能である

などがあげられます。

 また、水素を用いる短所は

  1. 最も軽い気体であり、高い圧力、極低温にしなければ液体にならないため貯蓄が難しい。
  2. 直接水素を自動車などに貯蔵することは危険である
    (そのため当面、メタノールとして貯蓄し、そこから水素を作る方法が有力視されている)

水素は貯蔵や輸送が難しく、水素ボンベや液体水素タンクではコストや安全性などの点で問題であるので、水素貯蔵合金やカーボンナノチューブの開発など、水素の新しい効率的な貯蔵方法がさまざまな機関や企業によって研究されています。
 また、水素を日常、簡単に手に入れるためには、ガソリンスタンドなどで水素を販売できるように、インフラを整備しないと駄目です。全国のガソリンスタンドがいきなり水素スタンドに変わるのも無理です。そこで車に水素タンクを積む代わりに、天然ガスやアルコール、あるいはガソリンを水蒸気と化学反応させて水素を作る、改質器を車に積む方法も研究開発されています。
 それでは、炭酸ガスを排出するので同じでないか、と思われますが、このような場合でも燃料電池のエネルギー効率は現在のガソリン車より遙かに高いので、ゼロエミッション車ではありませんが、クリーン度は現在の自動車より遙かに向上します。(デイーゼル車のエネルギー効率が約20-25%程度に対して、燃料電池の総合エネルギー効率は約80%にもなるともいわれています。但し、現在ベンツで開発の燃料電池車でのデータでは全負荷時55%です。)
 日本では、2003年を目標に自動車メーカが競争で商業化を進めています。この状況は欧米の主要自動車メーカでも同様で、毎年開催される自動車ショーで、燃料電池車の進歩に世界中が注目しています。燃料電池車の価格が小型乗用車並みに下がると仮定した場合、2020年の燃料電池車の普及台数は日本だけで430万台に達し、乗用車保有台数の7%となるという見通しもあります。

 また、燃料電池が燃料電池車として普及して大量生産で低コスト化すると、燃料電池を家庭用、オフィスビル、マンションなどに、電気と熱を双方供給することができると、ガス会社や電気メーカの取り組みも始まっていて、21世紀は水素エネルギーの時代に変貌していく可能性があります。燃料電池が実用化するか否か、それはここ数年の技術開発で行く末が見えてくるでしょう。
 
 最近は、燃料電池ブームで沢山の本がでていますので、さらに詳しいことはそれらの本を一読されることをお薦めします。
 例えば 「入門ビジュアルテクノロジー 燃料電池のすべて 池田 宏之助 日本実業出版社 」などを読まれれば良いでしょう。  


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