(質問)「計算機による推論」での例について主蒸気管の破断に関する計算機による推論で、スタートしてすぐ、誤りが発生しています。即ち、主蒸気管が破断すれば、蒸気は系外に出て行くのであり、タービンに行く蒸気の量は減少します。この段階で推論が破綻しています。なお、主蒸気管が破断すれば、それを検知してプラントはトリップします。
(回答) 頂いた御質問の推論部分は誤りがありました.速やかに訂正致しました.主蒸気管が破断(急に配管が完全に破壊されてしまったり,関西電力美浜での復水配管の破損のような大きな亀裂によって大きな穴が開いてしまうような大きな配管の破損事故)の場合,安全注入(ECCS)が自動的に起動し,その起動信号で原子炉が緊急停止します.これは,蒸気が圧力の低い配管の外にどんどん流れ出すことによって,蒸気の流れが増大し,原子炉が急に冷やされるからです.原子炉を冷やすということは一見,安全方向に向かっているような感じを抱きますが,急に冷やした場合,思いがけない反応度が原子炉に加えられることになり,危険な状態になります.これを防止するため,ECCSが働いて,高濃度のホウ酸水が原子炉に注入されます.ホウ酸水は中性子を吸収する働きがあります.チェルノブイルのような破局的な事態になって終う前に火種を消してしまうのです.
(質問) 質問をしようと書いている最中にバスケット分析に戻って確かめているとこの画面が全部消えてしまいました。手間が掛かるので、途中でも入力が保存されていると助かります。
(回答)訂正致しました。質問の入力画面は別のウィンドウに開くようにしました。

(質問)
1.東電の二次分析で応力というのはどういう理由で出てくるのですか?教えてください。
2.関電の二次分析で 作業、残留 という意味が分かりませんでした。詳しく教えてください。

(回答) バスケット分析では,各単語をバラバラにしてルール作りをしますので,各文の意味即ち「文脈」が失われてしまいます.各単語はデータに過ぎなくなってしまうのです.従いまして,結果としてそうなったということしかバスケット分析では分かりません.解説にも書きましたが,一種の統計データからのルール作りですので,A→B→Cが傾向として言えるというという情報しか得られません.逆にこれを逆手にとって,各分野の知識が無くとも大体の傾向が得られるという長所もあり,高度知識処理の分野では,KDD(knowledge discovery in database:データベースからの知識発見)と呼ばれています.
従って,従事者として意味を推察せざるを得ないのですが,作業に関しては,保守のための作業,残留(残ってそのまま留まっていること)は応力,即ち,残留応力ということになると思います.残留応力とは,発電所の配管等を溶接する際に,力がかかったまま溶接してしまい,それが時間とともに劣化して割れてしまうことを言い,原子力発電所では,多くの発電所は悩まされている問題です.解決方策としては,「焼き鈍し」を行う事や,完全に変な力のかからない形で,再度,溶接しなおすですが,実際に発電所で全体に行うには,技術的困難や経済的理由で行われていないようです.

(質問) 上記は、3次分析、4次分析、・・・などでもっと分かるなら、もしやって頂けるなら期待しています。

(回答) 3次分析の結果を、今回のニュースレターで紹介いたします。
(質問) もしこういう分析で、機器の故障率、ヒューマンエラー率などを推定できるなら有り難いことですが、見解をお答え下さい。
(回答) アイデアとしては非常に面白いコメントを頂戴しました.しかしながら,データマイニングの目的は大量のデータから傾向を把握する目的で用いられます.機器の故障率,ヒューマンエラー率を求めるのに十分信頼できる定量的な値が得られないように思います.ただ,例えば電力会社の機器故障率,ヒューマンエラー率を求めようとする時,データマイニングの結果を利用する事が出来ます.例えば,加圧水型電力では,蒸気発生器の応力腐食割れ,(電子)回路の不具合が多いとパターンで得られた場合,プラントの事故・故障につながるのは上記の機器なのですから,各々のデータ個々を精査します.故障率を算定し,例えば確率論的安瀬評価の電力固有のデータを得る事ができる可能性があります.電力固有の値が得られた場合,数学的な処理をすれば,今採用されている確率論的安全評価の機器故障率との併用(置き換えて使用すること)も可能です.

最後の更新:2006年1月11日