京都大学エネルギー科学研究科 エネルギー応用科学専攻
教授 西山 孝
まず、世界のエネルギー需要増加の要因と今後の需要予測、次いでエネルギー資源の中で現在最も使われている化石エネルギーを中心に将来のエネルギー供給の事例について講演があった。
世界の一次エネルギーや鉄・銅・亜鉛などの鉱物資源の生産量は、1950年以降急速に増加し、オイルショックの時期に少し停滞したもののそれ以降はまた増加している。このような過去の統計の変動要因として(1)人口増加、(2)生活水準の向上、(3)科学技術の発達が挙げられる。中でも(2)生活水準の向上が、もっとも大きな要因であると考えられる。仮に中国が2025年にアメリカの生活水準に達した場合、2014年には中国一国だけで、1992年の世界全体の一次エネルギー消費量に到達するという統計データもある。
世界の一次エネルギーの消費量を見ると、8〜9割が化石エネルギーである。そこで、化石エネルギーの中の原油と天然ガスについて、現状と今後の展望を考える。
世界の原油生産量と埋蔵量を見ると、欧米諸国の生産量は多いが、埋蔵量は少ないことが分かる。また、埋蔵量は中東だけで世界の65%を占めている。このことより、今後、原油はさらに中東依存が進むと考えられる。そして、原油は年々発見量が減少し、今後枯渇の危険性がある。
一方、天然ガスは、欧米諸国の生産量は多いのに埋蔵量が少ないのは原油と同じであるが、埋蔵量は比較的世界に分散している。また、天然ガスは石油よりも地下深くに存在することが多く、未発見のガス田がまだ多く存在していると推定される。さらに、炭酸ガスが閉じ込められたメタンハイドレードが世界の海底や凍土層に存在するといわれている。しかし、メタンハイドレードの位置を確認し、開発する技術がまだあまり存在しないのが現状である。将来、技術の革新が期待されている。
さて、これら化石エネルギー以外で今後のエネルギー源として期待できるものに、地球の受ける太陽放射のエネルギーや地球内部の熱エネルギーがある。これらのエネルギーは膨大で、利用できる技術が確立されれば、心強いものとなると考えられる。
今後、エネルギー需要は増加していくが、それに伴って、既存の資源エネルギー(化石エネルギー、陸資源)から新しい資源エネルギー(海洋資源エネルギーなど)に徐々に転換していくことが、好ましい需給動向を実現させると考えられる。
最後に、西山先生の研究室で行われている研究の紹介があった。珪藻土原土から太陽電池原料用シリカを抽出する研究である。従来は、熱分解による精製が中心であるが、精製する過程で生じる電力コストが高いのが問題点である。そこで、溶解・pH調節・析出による不純物除去により、太陽電池原料用シリカを抽出し、低コスト化実現を目指す