株式会社 旭リサーチセンター 大島 正明 氏
今後の日本は、世界でももっとも急速に高齢化が進み、65歳以上の人口比率が世界でもっとも高い国になると予測されており、2020年には国民の4人に
1人が高齢者となると予測されている。
このような急激な人口の世代構成の変化と生産年齢人口の減少に伴って、経済や社会の構造を適合させていくことが必要である。また高齢者の社会参加の点からも、現在の60代の男性でおよそ65%、女性のおよそ30%が就労意欲あり、というアンケート結果からうかがえるように、就労したいという意欲を持つ人も多く、社会からも高齢者の持つ知識などを生かすための社会参加が望まれている。
しかし、実際には高齢者が就労するためには身体機能においてさまざまな障害が存在する。具体的には、筋力の低下や視覚能力の衰えに代表される身体能力の低下が障害の要素となっている。また仕事をするために必要な機器が高齢者にとって使いやすい設計となっていないことが多い。そのため、高齢者の就労や生活の自立を支援するために、安全で快適な作業環境や製品の社会整備が急務である。
ところで「科学技術予測2001」での調査によると、将来の技術開発課題において重要度が高いとされるものの中に「保健・医療」、「ライフサイエンス」の分野があげられている。しかし、日本の「保健・医療」や「ライフサイエンス」の分野は海外の研究開発水準と比較すると遅れていると指摘されている。
今後予測される高齢者の増加により「医療・介護」が重要な分野となるため、現在遅れているとされる「保健・医療」や「ライフサイエンス」の分野の技術開発を強く進めていくことが必要となってくるだろう。
そのような技術開発として具体的には、「心身機能の計測・評価技術の開発」、「心身機能の支援機器技術の開発」が必要となってくるだろう。また高齢者の支援技術の開発を容易にするために筋力データや心肺機能などの加齢に伴う能力変化の把握を補助するための「加齢特性データベース」の構築が必要となってくる。また高齢者の増加にともなって増加するといわれる高齢者特有の病気の治療・診断機器や介護・福祉機器もさらに技術開発が必要となってくる。
結論としては、以上で述べたように今後の日本の社会を考える上で、高齢者の増加は大きな要素となり、世界でももっとも高い高齢者率となると予測されるほどの高齢社会を支えるための技術開発・基盤整備は今後の日本にとって重要な課題である。