「原子力の安全規制について」

 原子力安全・保安院 院長 佐々木 宣彦 氏


 近年、東京電力での不正発覚やもんじゅナトリウム漏洩事故など、原子力に関する一連の不祥事や事故により、原子力の安全性に対する国民の信頼感は低下し、わが国の原子力開発利用はこの40年の歴史の中で最も厳しい環境となっている。その中で、原子力施設の健全性に対する懸念や、原子力安全に関する説明責任への国民の関心の高まりなど、これらの課題にどのような姿勢で取り組むかが原子力安全・保安院に問われている。

 そこで、原子力安全規制のさらなる効率的かつ的確な施設を図るため、独立行政法人「原子力安全基盤機構」を設置し、国の原子力安全行政部門における事務の一部、およびこれに関連する公益法人への委託実施事務を当該独立行政法人に移管して実施することとした。このため、当該独立行政法人の設置のための法律を制定するとともに、関連する法改正を進めている。

 現行の原子力施設の検査制度は、あらかじめ決められた施設の健全性をあらかじめ決められたとおりに確認する検査体制であるため、施設設置のプロセスや事業者の保守点検、品質保証活動について十分な確認を行える仕組みになっていなかった。そこで、現行の検査制度を見直し、施設の健全性だけではなく、施設の設置のプロセスや事業者の保守活動全般を、抜き打ち的手法も活用し確認する検査体制の確立を目指すものとする。

 検査の実効性向上の具体的な対応としては、抜き打ち的手法の導入のほか、これまでの、自主点検項目を定期事業者検査として義務化し、定量的なリスク評価の活用、原子炉ごとのパフォーマンス評価に応じた検査の適用、軽微なトラブルから得られる教訓の共有化などがあげられる。また、定期事業者検査結果は原子力安全委員会に報告されることとなる。これにより、ダブルチェック体制が強化され、より安全確報への取り組みが充実することとなる。さらに、組織的な不正を抑制するため、基準適合命令違反や国の検査忌避、報告徴収命令違反等の重大な違反事案について法人重課を導入するなど、罰則の強化を行った。

 続いて、検査制度に対する信頼性を確保するための対応として、事業者側では、品質審査のための独立部門の設置、および第三者による評価の活用を行う。また国側では、検査官の教育、訓練、および検査実施状況について内部評価を行うこととしている。そして、検査結果の公開により、原子力に関する透明性を確保するとともに、原子力の安全確保システムが実効的に機能していることについて、国民の理解を得ることを目指す。

 原子力の安全確保に終着駅はない。今後も、安全規制システムの耐えざる向上が必要である。原子力安全に対する国民の信頼感の確保は、国と事業者に共通する課題である。原子力安全・保安院としても立地地域の住民を含め、国民の疑問・懸念に丁寧に応えていく姿勢で臨んでいく所存である。


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