(株) 旭リサーチセンター 主幹研究員 秋元 真理子 氏
近年、マーケティングの形態は、市場シェアの獲得を目指すものから顧客シェアの獲得を目指すものに変わりつつある。その背景には、バブル後も膨らみ続けた供給の過剰と長年の不景気による消費低迷があげられる。現在の多様化した既存の市場では、大きな市場シェアを獲得すること、またそれを維持することは大変困難である。対して、顧客シェアを獲得することは市場シェアを獲得すること以上に難しいが、いくつかのメリットがある。
そのひとつが二次的、三次的な消費を生み出すということである。アフター・セール型モデルがその典型である。アフター・セール型モデルとは、企業が最初にBase
Productを販売し、続けて幅広いFollow Products/Servicesを他社との連携により提供するものである。
次に、顧客とは進化するものであり、企業の資産であるとする考え方もある。見込み客から顧客へ、そこから得意客、支持者、代弁者・擁護者、パートナーと進化していく。進化に伴い、企業にとって製品・サービスに対する消費者を代表したアドバイザー、自社製品を知人に紹介する伝道者の役割をも果たしてくれるようになる。
企業が顧客との関係を管理する手法として、例えばCRM (Customer Relatiionship
Management) がある。CRMのプロセスでは、まず顧客データベースを作成し、顧客の識別をする。次に顧客を差別化し対話を行う。そして、それに応じて顧客に対する企業の態度をカスタマイズする。CRMはカスタマイズの段階まで行って有効な手法となるが、日本の企業は大きなコストや差別という言葉へのアレルギーから導入を断念してしまうケースが見られる。
また、マーケティングの変化に伴い、企業とよるサービスも、なるべく多くの顧客のある程度のニーズに応えようとする形態から、特定の顧客のあらゆるニーズにj応えようとする形態に移行している。価格決定や製品開発も企業主導から顧客主導に変わりつつある。つまり企業は顧客のニーズにこたえ、消費を獲得するためにも、顧客を詳しく調査するとともに、顧客が必要とする情報を公開する必要である。
そして、目覚しいスピードで進化している情報時術が企業と顧客のコミュニケーションを容易にしたことは言うまでもない。また、これまでは多くの時間やコストがかかるため不可能だった調査やコミュニケーションを大規模で行い、一括で管理・利用、そして商品・サービスの提供を可能にしたのも技術の発展によるものである。
社会情勢の変化や技術発展などの背景からマーケティングが変容の時期を向かえた現在、私たちは未開の市場機会を発見することができるだろうか。