独立行政法人原子力安全基盤機構 技術顧問 青木 英人 氏
旧ソビエト連邦におけるチェルノブイリの事故を契機として、原子力発電所の安全性の向上を目的とした原子力安全条約が国際的に締結された。この条約では、各国の報告の提出および検討会合への出席が義務付けられ、その結果、日本を含む先進諸国の説明責任の発展へと繋がることになった。また、検討会合での情報はウェブに公開され、情報の透明性が向上する効果をもたらした。
また、3年に1度の国別報告の作成および英訳を定めた放射性廃棄物安全条約の締結に伴い、2003年11月には第一回の検討会合が行われ、廃棄物の処分に係る国の政策、およびそれに則した安全確保のための実際的な法的・国際的枠組みの国別報告とそれに対する質問・検討が行われた。
上記のような国際的活動に代表されるように、原子力発電とその廃棄物の安全性について、国際的な説明責任が高まってきている。また、長期にわたる高レベル廃棄物・超長寿命廃棄物やその処分をめぐる方法、さらには今後次世代に対す負担をいかにして軽減するか、について国際的な枠組みの確立を目指す動きが広まっている。しかし、フランスや現在のアメリカなどの原子力推進派、ドイツなどの原子力に否定的な各国それぞれの政策には様々な長所・短所が存在しており、法令、立地基準や安全基準、あるいは規制機関に対する一定の基本方針を調整・制定すること、さらには将来をにらみ、それらの結果をバックフィットするための概念の確立や不完全さへの対応の準備を行うことなどが今後課題となる。
日本については、ヨーロッパなど諸外国との間で「無主の廃棄物」に対する扱いを始めとした廃棄物に対する法整備上での扱いが違うことや、規制方針の食い違いなどの問題があり、国や民間の指針とのバランスを保ちつつ、必要な国際基準を取り入れた原子力の施策を定め、それにそって原子力事業を展開することがテーマとなっている。また、諸外国に比べると、情報公開の遅れが指摘されており、各国がすでに行っている検討会合における質疑応答事項の内容の公開を始めとして、情報をオープンする姿勢をさらに強め、政策の透明性を確保するとともに、国際的・国内の両方に対する説明責任を果たすことが必要とされる。
今後日本は、国内法令・基準の整備だけでなく、アジアにおける代表国のひとつとして、その国内法令・基準類が近隣諸国に対し少なからず規範となることを踏まえ、国際的枠組み作りをリードしてゆくことが求められる。