「大規模複雑システムの安全確保のためのヒューマンワークインタフェース−新たな安全設計/管理戦略の展開を目指して−」


日本原子力研究所社会技術システム推進室 研究主幹 田辺 文也 氏


社会技術研究システムミッションプログラム原子力安全Uグループでは、「安全確保のためのコミュニケーションシステム」をテーマとして、原子力発電システムのような大規模かつ複雑な社会技術システムについて、システム作業従事者と周辺地域住民等がそれぞれシステムの状況を正確に把握して、適切な意志決定を行うことを支援するコミュニケーションシステムの研究開発を行っている。

 研究課題としては、プラント安全運転・操作、管理・運営主体の意志決定支援、地域防災の3つに関わるコミュニケーションシステムの設計がある。達成目標としてはそれぞれ、運転操作や異常時に適切な対処を行うためのヒューマンワークインタフェース、組織内コミュニケーションシステム、防災用広報システム、の基本概念やプロトタイプ等の構築が挙げられる。

 原子力施設などにおける安全確保には次のような基本的問題がある。
(1) 想定したシナリオがすべての状況を網羅することは不可能
(2) システム設計で意図していない機能の発現(負の副次効果)

 さらに、JCO臨界事故やTMI炉心損傷事故の分析によると、従来型の安全設計/管理戦略では、ダイナミックに変化する社会環境や、想定外状況に対応できないといった問題点があり、また、安全性と効率、規則の強化と創意工夫、監視と士気などの間に存在する二律背反の克服法を示すことができていない。

 これらの問題に対する解決の方向性としては、作業者の的確かつ創造的な知的対処能力の獲得・維持の支援、安全境界とそこまでの距離の可視化、ダイナミックな状況への適応能力を高めるためのCommand& Control組織からCoordination & Cooperation組織へ移行が考えられる。これらに基づき、安全設計/管理における基本的問題解決を目指した「ヒューマンワークインタフェース」を提案する。これと従来型との比較を下表に示す。

 現在の研究の進捗状況は、実験環境と各パラメータの有機的な関係をパターンとして見ることのできる生態学的インタフェースシステムのプロトタイプの構築を完了し、新型インタフェースに基づいた分散型教育とインタフェースの分散型評価を可能にするシミュレータ実験再現システムを作成したところである。

従来 ヒューマンワークインタフェース
ヒューマンマシンインタフェース SSSI*1ベース 機能・境界重視型(EID*2概念)
教育・訓練 操作スキル獲得重視型 機能・理論教育重視型
手順 ステップ・バイ・ステップ動作重視型 タスクゴール重視型

*1 Single Sensor Single Indicator *2 Ecological Interface Design


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