「Halden Reactor Project の研究報告」


Fridtjov Owre氏 、Andreas Bye氏、Terje Johnsen氏 (Halden Reactor Project)


 はじめにHalden Reactor ProjectのOwre氏より、同プロジェクトの概要説明があり、続いてBye氏より同プロジェクトのMMS(マンマシンシステム)関連の研究説明がありました。さらに、Johnsen氏により、同プロジェクトのVRセンターでの研究活動について説明がありました。



Halden Reactor Projectの概要(Fridtjov Owre氏)

Halden Reactor Projectは、OECD諸国のうちの20ヶ国、100を越える研究機関が参加して、主に原子力プラントの安全性の向上を目指した国際プロジェクトです。研究プロジェクト課題は、基本的に3年ごとに更新され、現在のプロジェクトは2001〜2003年です。同プロジェクトの研究設備としては、実験用原子炉であるHBWR、操作室での人的要因を実験検証できるHAMMLAB、人工現実感を用いた設計や評価を行うVRセンターなどがあります。HBWRは、主に原子炉燃料や原子炉材料を中心に研究を行っており、現在も研究を進めるとともに改良を続けています。
  昨年は原子炉の検査を行い2009年までの運転ライセンスを取得している。HAMMLABでは、運転員支援システムであるPiccaso、COAST、PEANO等の開発を進めるとともに、保有の運転室シミュレーションルームで実際の運転員を被験者とした評価実験を行い、その有効性を検証しています。また、VRセンターでは、人工現実感技術を用いた制御室の設計・評価、廃炉処理計画、保守作業訓練等への応用研究を進めています。 また、当プロジェクトでは、大規模工学システムにおける人間−機械系の諸問題を、MTO(Man-Technology-Organization)の3つの立場から多角的にとらえています。



MMS(マンマシンシステム)関連の研究説明(Andreas Bye氏)

 Halden Reactor Projectのうち、MMS関連の研究は、HAMMLABを中心として16の研究課題を進めています。HAMMLABは、4種類のプラントシミュレータとオペレーションルーム(図1参照)を用いて、人間機械相互作用の実験を行う設備です。HAMMLABでの実験は、
(i) 様々な実験条件の設計
(ii)実操作環境に近いリアルな状況での運転操作シミュレーション
(iii)実験結果の多彩な分析方法
などを特徴としています。これまでに、本プロジェクトで開発してきた運転員支援システムのための基礎的データの収集や開発したシステムの実験的評価を行っています。具体的には、アラームシステム、診断システム、電子化プロシジャ、事故管理、予兆システム等を対象とした評価とデモを行うためのテストベッドとして利用しています。HAMMLABでは、今後、新規シミュレータを導入するとともに、オペレーションルーム設備の改良を行っていく予定です。

図1 HAMMLABのオペレーションルーム

図1 HAMMLABのオペレーションルーム



VRセンターでの研究の説明(Terje Johnsen氏)

本プロジェクトのVRセンターは1996年に設立され、最新のVR技術を用いてプロジェクトの研究活動に密接にリンクした研究活動を行っています。具体的には、
(i)制御室・制御盤の設計
(ii)炉の解体計画
(iii)保修作業訓練
(iv)VR環境開発ツール
等の研究を進めています。
 (i)制御室・制御盤の設計(Control Room Engineering)では、従来のように実物大のモックアップモデルを作成せずに、図2のような仮想空間中に制御室を作成し、設計者だけでなく、ヒューマンファクターの専門家をはじめ運転員等が制御室のイメージを共有して議論・評価することができます。このようなVR技術を用いたプロトタイピング手法により、設計・評価期間の短縮と設計品質の向上を図ることができます。
 (ii)炉の解体計画では、主に作業時における被爆線量の正確な推定と低減を目指して、仮想空間中に作成された作業現場と放射線源から空間中の放射線量を計算し、それをもとに作業計画や被爆線量シミュレーションを行います。図3は被爆線量の推定と可視化の一例です。
 (iii)保修作業訓練は、作成されたプラントの仮想空間で保修作業の訓練を行うものですが、これについては現在研究開発中です。
 (iv)VR環境開発ツールは、当プロジェクトで独自に開発されたCREATと呼ばれるもので、仮想空間中のもののレイアウト、配色、照明環境等をGUIにより簡単に構築することができるものです。

図2 仮想空間中に作成された制御室のプロトタイプ

図2 仮想空間中に作成された制御室のプロトタイプ

図3 作業員の移動パスと被爆線量

図3 作業員の移動パスと被爆線量




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