全体概要:
原子力と共生する地域の女性3名と原子力の現場で働く男性2名がパネリストとして参加し、原子力に対するイメージ、原子力への要望、マスコミや一般社会と地元とのギャップ、地元と発電所とのコミュニケーションのあり方などの議論の後に、2名のコメンテータによる講評と司会者による全体の纏めがあった。(なお、本企画は、経済産業省原子力安全・保安院原子力安全基盤調査研究『原子力の社会的リスク情報コミュニケーションシステム』プロジェクトのメンバーが企画に当たったものである。)
●原子力のイメージ
地元女性から、日常生活の中ではあまり意識しない、不安感も安心感もともに漠然としているという意見が示された一方で、現場ワーカーから、一般の工場と似ているが品質管理のレベルの要求が高いといった意見などが示された。
●原子力への要望
地元女性から、周辺住民には事故が起こった際のマニュアルが徹底していないことへの不安が表明された。これに対して、発電所内ではマニュアルや訓練が徹底されていることが現場ワーカーから示された。
●マスコミや一般社会とのギャップ
地元女性から、活字になった段階でマスコミの情報と現実とのギャップを感じることが多いという意見が示された。現場ワーカーから、厳しい報道によって安全管理がよくなるとの見解も示された。また現場ワーカーからは、地元の人々と原子力について話す際に、専門的な内容を平易な言葉で伝えることが難しいという指摘があった。
●地元と発電所のコミュニケーション
地元女性から、発電所の方から出向いてほしい、具体的な情報を隠さず発信してほしいという要望があった。一方、現場ワーカーから、公式なコミュニケーションの場よりも、自分の身近な知り合いに現場を見せたりすることで交流を図りたいとの意見が示された。
●討論全体のまとめ
コメンテータの八木氏から「地元の方々が望んでいるのは、表向きの情報伝達ではなく、現場の取り組みのリアリティではないか」、杉万氏から「コミュニケーションには、公式な情報だけではなく、裏話的な情報も必要である」「原子力に対する距離感のギャップを埋めるために、異なる立場の人を組織に組み込む必要がある」との講評があり、司会の秋元氏から、「個々の人が自分の意見を言えるように、原子力についての色々なレベルでのコミュニケーションや材料が必要である」という趣旨のコメントがあった。 今回のパネル討論から、現場や地元の人々にとっては、原子力を特別なものではなく、あくまで日常の一部としてとらえていること、したがって、現実に即した情報やコミュニケーションが望まれていることが示唆された。公的な場に限定されない交流ネットワークを支援する仕組みを設けていくことが重要と思われる。