「原子力と学会の役割〜日本学学術会議会員として」

(株)原子力安全システム研究所 技術システム研究所
 所長   木村 逸郎

講演概要:  
日本学術会議法は、演者が中学校に入学した年に成立したものである。演者は昭和10年の生まれであり、中学・高校・大学時代は日本の混乱期と重なった。科学部や文芸部、演劇部に入り、科学技術が役立つという実感を得、民主主義の訓練をし、真正面からばかり物を見ず芝居心をもつことの必要性を、学んだ。阪大工学部では電気工学を専攻、大学院では、当時新しい分野として注目を集めていた原子力分野に進んだ。京大の研究炉の建設に参加でき、性能、構造、実験設備まで、徹底的な検討を行い、様々な人と交流した。

このような中で、日本原子力学会は昭和34年に設立され、演者は、当初の学生会員から、正会員となり、本年春にはフェローに認定された。学会では、副会長、関西支部長などを歴任したが、特に、昭和44年には、企画委員として、日本原子力学会として初めての炉物理夏の学校を開催した。現在では、その他の多くの部も設けられ、活発な活動が行なわれているが、独立な部会の活動でだけでなく、総合的な知識と判断を得ることが原子力分野には重要である。日本原子力学会の推薦を受けて、日本学術会議会員となり、現在に至る。

日本学術会議は、その会員が210人であり、研究連絡委員会180、その委員2370人、登録学術研究団体は1481団体、研究者数約76万人である。第1部〜第7部より成り、工学は第5部(定員33人)となっている。その活動は、国内的には研究の有り方を検討し、国際的には国際学術団体を発展させることなどである。最近の活動方針は、「科学のための科学」であり、「社会のための学術」を基軸にしつつ、「行き詰まり問題」に発展的かつ集中的に取り組んでいる。原子力分野に関しては、早期より原子力平和利用が推進されている。

日本学術会員としての演者の活動は、まず、一般的なものとして、第18期の「学術の在り方」常置委員会や、第19期の「安全・安心な社会と世界の構築」特別委員会への参加である。また、原子力工学代表としての活動では、文部科学省科学研究費補助金について、その計画と実施に協力してきた。さらに、法人化する大学と原研・サイクル機構統合新法人について、「日本原子力研究所と核燃料サイクル開発機構の統合と我が国における原子力研究体制について」(平成14年5月)と「国立大学法人における放射性同位元素・放射線発生装置・核燃料物質などの管理について」(平成15年3月)の、2つの対外報告をとりまとめた。そして、原子力学の再構築のため、「人類社会に調和した原子力学の再構築」という対外報告をとりまとめた。

最後に、過日の、関西電力美浜3号機2次系配管事故について、なぜ当該場所の検査が抜け落ちたのか、2次系配管破損事故に対する備えは十分であったか、などの疑問を呈するとともに、原子力発電の安全に取り組む者として、また、福井県原子力安全専門委員会の委員として、事故を受け止めていきたいと考えている。


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