講演概要:
講演内容は、原子力安全システム研究所が、1993年以来2003年9月までの、10年間にわたる原子力発電に関する継続的な世論調査の結果をまとめたもので、今回の美浜事故に関する意識調査は行っていないが、今後予定しているとの紹介が最初にあった。
世論調査の目的は、原子力発電に関する一般の人々の意識を調べることであり、定期的な調査と原子力に関わる事故・事件後のスポット調査を組み合わせている。調査地域は関西であり、必要に応じて全国や関東も含める。調査対象は、18歳以上79歳以下の男女、サンプリング法は層別2段無作為抽出、調査方法は留め置き法による。1回の調査では1500人程度を対象とする場合が多く、これまでに3回の定期調査と5回のスポット調査を行なった。回収率は70%以上で信頼できると考えていることや、世論調査の回答を検討した結果、個人の回答にはゆれがあっても全体としては安定性が見られることが示された。
原子力発電に対する意識について、まず、原子力への連想を自由記述で尋ねると、4割以上の人が「発電など」を連想し、この10年間で大きな変化はないが、1969年実施の総理府世論調査の結果と比較すると、軍事利用のイメージが大きく減少し、電源としてのイメージが大きく増加している。原子力施設事故の不安に関しては、「非常に不安」と感じる人の比率は変動があり、事故後に高い水準を示すなど、事故などに影響されやすい。また、「道路交通事故」、「環境破壊」に対する不安感よりも、「原子力」への不安感は低い。一方、原子力発電の利用は消極的に支持され、不安感と比べると変動しにくいことが示された。不安感と利用態度について、不安感は高いが、社会的出来事に反応して変動しやすい、また、利用への支持は高く、不安を抱きながらも受容されていることが示された。原子力発電の支持理由としては、発電方法の多様化のためその必要性が評価されているようである。
原子力発電への総合的態度を分析するために、数量化V類(8問を合成した指標)を用い、原子力発電に対する「好意的・非好意的」を調べた。1993年と1998年の結果を比べると、1998年は、1993年より「やや好意的」が増えている。JCO事故2ヵ月後のスポット調査では、安心感が低下し、事故内容に対するネガティブな影響は出たが、電力利用に対する意識は変化がなかった。男女別では、女性層では原子力発電に対する「強い好意層」が少なく、事故などの一時的な影響を受けやすい、原子力の知識が男性と比べて少ない、が示された。また、全体としてネガティブな意識は一時的であり、女性の意識は変動しやすい。
首都圏電力不足については、供給側ではなく、電力の使いすぎなど、需要側の問題と捉えられている。その広報活動は、関西に比して関東の方が盛んだったが、節電に対する意識差はなく、広報活動が個人の節電行動には直接結びつきにくいことが示された。