講演概要:
吉川 榮和氏(京大)の司会のもとに、実行委員会報告として美浜発電所3号機の2次系配管破損事故の速報が久郷明秀氏(関西電力)より報告され、その後会場の参加者により意見交換が行われた。
●美浜事故速報概要 平成16年8月9日にタービン建屋2階の第4低圧給水加熱器から脱気器への復水配管が破損し、15:22火災報知器が作動、15:25運転員が蒸気の充満を確認、15:26緊急負荷降下を開始、の経過を経て、15:28原子炉が自動停止した。事故発生時に現場にいた協力会社の作業員のうち、5名が死亡し6名が負傷した。(被災者は、いずれもタービン建屋2階において、8月14日から実施予定の美浜3号機第21回定期点検の準備作業を実施していた。)
破損部復水配管には約10気圧、約140℃の水が流れていたが、破断箇所の50cmほど手前で流路を絞る内径335.2mmのオリフィスによって生じる乱流によって当該部分に減肉が進行していた。破損配管の肉厚を確認したところ、肉厚が約1.5mm(一番薄いところで0.6mm)と大幅な減肉を確認したが、過去にこの配管の点検の実績はなかった。2次系配管減肉による同様の事故が過去に米国サリー原子力発電所で発生していたため、関西電力でも平成2年に「原子力設備2次系拝見肉厚の管理指針」(PWR)を策定して平成8年までは三菱重工に依頼して減肉調査を行っていたが、それ以降は、関西電力の協力会社に調査管理を変更した。
事故発生後、配管の肉厚管理が未実施である部位の有無について調査し、8月16日に未実施箇所4箇所、8月18日に未実施箇所11箇所があることが判明した。これに関連して、全プラントを3つのグループに分けて計画的な順次停止による点検を行い、順次点検を実施している。現在までに、第1グループのプラントを停止して肉厚検査を実施の結果、第1グループのプラントについては、すべて健全であることを確認した。また、点検が未実施箇所15箇所についても肉厚測定を実施し、健全であることを確認した。さらに、美浜2号機6箇所、高浜2号機2箇所、大飯3号機1箇所、大飯4号機3箇所の計12箇所の追加点検を実施した。そのうち、美浜2号機の高圧排気管と主給水管については、評価上問題のない肉厚を有しているものの比較的余寿命が短いことから、停止期間中に取り替え補修を実施することとしている。
事故後に発足した調査委員会では関電による減肉評価が電事法第39条 省令第62号の第34条 省令第51号等の法令の解釈を誤って運用していたことが指摘された。
当面直ちに取り組む対策として、(1)労働安全の確保、(2)組織改正、(3)2次系配管肉厚管理の厳正化、(4)「原子力保全機能強化検討委員会」(仮称)の設置が上げられた。
久郷氏は、関西電力の立場から、今回の事故への陳謝と今後二度と同様の事故を起こさないために徹底して取り組み、原子力発電所の安全確保と信頼回復に努力するとの反省についても補足された。
●速報後の会場での意見交換の概要
1. 事故発生後の情報公開活動のあり方について意見交換があった。今回は人身事故になったこと、また、過去の検査に複数の会社が関与していることもあり、難しい面があることも指摘された。
2. 事故発生後の中央制御室の運転操作は適切であったかについてHMS専門家の観点からの質問があった。
3. 検査管理会社変更の経緯と理由について質疑応答があった。
4. 昨年10月に改正された定期検査の規制や監査と今回の事故との関わりについて意見が交換され、亀裂検査だけでなく減肉検査についても民間基準の整備が必要との意見がだされた。
5. 保守検査技術や検査員の技術能力の向上、材料健全性の評価法の向上などへのHMS部会のこれからの取り組みの必要性について意見交換があった。