平成16年11月10日に、京大工学部6号館363号室(共同2)で、「スウェーデン、スウェーデン人とエネルギー」と題して、スウェーデン・リンシェーピン大学教授エリック=ホルナゲル博士の特別講演が行われました。以下にその講演概要を紹介します。
スウェーデンと日本を位置、気候など自然環境要因で比較すると、スウェーデンと日本の国土面積はほぼ等しいが、北に位置しているため、気温が低く日照時間は少なく、またスウェーデン国内でも北部、中部、南部で異なっている。また人口密度、電力消費量、GDP、貿易のような社会的要因、CO2排出量、人口に対するCO2排出量を比較し、日本がスウェーデンと比べ、電力を多量に消費し、CO2排出量も多い点を指摘された。
次にエネルギーに絞り、スウェーデンと日本とを比較し、総一次エネルギー供給量についてスウェーデンの現状(2001年データ)を示し、電気供給源は、水力が47%、原子力が46%を占めていることのことであった。さらに、総エネルギー生産量の1971年から2001年までの推移をスウェーデンと日本とで比較された。スウェーデンは原子力と水力が同調して増加傾向に対して、日本では石油が減少する一方で原子力や天然ガスが増加しているという、電力源の構成の違いを指摘された。また北欧では地域暖房が昔から進んでいることも日本とは大変異なる。地域暖房はエネルギーの効率的使用法である。
Arrhenuis,Sはスウェーデン人の有名な科学者だが、彼は1895年に炭酸ガスの増加で地球が温暖化することを予測している。彼が手計算で求めた結果は現在の予測と合致している。しかし当時は受け入れられず、彼は別の研究でノーベル化学賞を受賞した(1903)。
スウェーデンでの原子力に対する世論の転換期は、1979年のTMI事故であった。すなわち、1980年の原子力に対する国民投票において、原子力を徐々に減らす方針が打ち出された(存続18.9%、徐々に減らす39.1%、10年以内に撤廃38.7%)。政府としては、25年以内に12基全ての原子力発電所をシャットダウンさせていくことを決定した。また、1990年〜1994年の国民投票で「すぐ撤廃」という強硬意見は5%前後であったが、彼らの90%近くが確信をもってそう答えたといっている。大多数は原子力に好意的意見だが、その確信度は50%前後。原子力への代替エネルギーを2つまで選択してもらった結果では、水力45%、風力43%、太陽光34%、省エネ25%、天然ガス24%の順であった。
スウェーデンでは、地球温暖化(もしくは環境問題)への関心が高く、化石燃料に頼らない電源への期待が高い。一例として、バイオガスの今後の導入計画では、2005年2%、2010年5.75%、2020年20%となっている。1996年から始まった電力規制緩和政策(北欧諸国内)の現状についても紹介され、また、グリーン電力(再生可能エネルギー)の認知度は、(知らない)が1998年40% 2002年20%となってこれも認知度は上がっているが、その実際の導入は微々たるもので、矢張り価格が高いことが背景にあると述べられた。
(ホルナゲル博士の講演資料を参照下さい。)