福島事故 理系の見た原子力発電
吉川 榮和

21世紀地球温暖化問題の解決。これは1996年発足の京大大学院エネルギー科学研究科の設立理念だった。これはまた日本の原子力推進派にとって渡りに船だった。ここ十年余、原子力委員会に糾合の当該リーダたちは、『富国強兵』の明治維新政府を髣髴させる『原子力立国』という仰々しい復古調エネルギー政策を先導したが、福島の水素爆発は原発とともに『原子力立国』も吹き飛ばしたようだ。

地球温暖化問題を『エネルギー、環境、経済のトリレンマ』と定義しつつ1997年京都プロトコル時代に華々しく登場の環境経済学派は、当時は炭素税導入を主張し、今は脱原発を先導する。だが1997年当時世界第2の経済大国の地位はすでに中国に奪われ、赤字国債累積で国際的地位低下一方の日本。福島事故で最早世界の地球温暖化を懸念する余裕のない日本。今は自らのエネルギー、環境、経済のいずれもが問題山積になった。

理屈は美しいが、その達成は無限に後退し莫大な税金を浪費するばかりでなく人間性の腐敗・抑圧まで随伴するハードエネルギーパス。今や軽水炉-高速炉-核燃料サイクル-高レベル放射性廃棄物処分路線の桎梏から解放され、エネルギー、環境、経済のアポーリア解決のあらゆる可能性に、あらゆる出自、あらゆる有志の人材が平等に挑戦し、切磋琢磨する。これがポスト福島の日本復活の道ではないだろうか。


Fukushima
福島第一発電所遠景(左上から時計周りに1,2,3,4号炉. 平成23年10月頃撮影.東電提供)

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